是松という教祖を失ったことで、自然消滅するかと思われた北軍浄化会は、予想に反して活動を継続していくという方針を打ち出した。


弱者同士が身を寄せ合い、自分達を迫害する者には断固立ち向かう。


結局、俺は是松を使って北軍浄化会の連中の心を折ろうとしたけど、それは叶わなかった。


是松は……死んで、北軍浄化会の中で絶対的な神となったのだ。


龍谷寺の庭に穴を掘り、布に包んだ是松の遺体を埋める。


北軍浄化会の人達に見守られながら、俺達は是松の墓前で手を合わせた。


「我々北軍浄化会は、彩子様の意志を受け継いで活動を続けます。あなた方は敵ではありませんが、あなた方の味方になるつもりもありません」


俺は……この強い意志というやつに触れ、初めて勝ち方がわからずに敗北したんだと思い知らされた。


煌我というイレギュラーによって敗北させられたと言うべきなのだろうけど、それを防げなかったのも事実。


俺は……負けたんだ。


「ひとつ聞かせてくれ。お前らの中から、美智みたいに化け物に変わったやつはいたか? 無理矢理東軍に連れて行かれたやつとかさ」


「彩子様と北軍浄化会を守る為に、力を得るべく東軍に渡った元はおりましたが、その行方はわかっておりません。無理矢理などとんでもない。彼らが自ら望んだことです」


津堂に化け物に変えられてまで、力を得ようとする人達がいるのか。


それほどに、この街は弱者にとっては地獄なのだろう。


「……よし、帰ろうぜ。ここで悲しんでても、美智が生き返るわけじゃねぇ。俺達には俺達のやることがあるだろ」


そう言って立ち上がった拓真は、門の方に向かって歩き出した。


是松の墓には、こんなつもりで持って来たわけではないだろう、花束が添えられていた。