俺が強かったからとか、隙を突いたからとかいう理由ではない。


煌我は、俺達に「是松の身に何が起こっていたのか」を伝えて、その言葉通り絶望する姿を見たかっただけなのだろう。


その目的を果たしたから、激昂して襲い掛かって来た俺の攻撃で、手っ取り早く死んでホームポイントに戻ったに過ぎない。


俺は……まんまと煌我にしてやられたというわけだ。


「美智……ごめんな。最初からずっと一緒にいてやればこんなことにはならなかったんだよな……」


もう、既に事切れている是松の遺体を抱き締めて、拓真は愛おしそうに頬を寄せた。


胸の横からの一撃。


それは身体を貫通して、心臓を破壊しているのだろう。


PBSの不具合は命に関わる……。


煌我の言葉通り、是松は光の粒に変わることがなく、永遠の眠りに就いたのだ。


俺は……この戦いにおいて、一体何をしたというのだろうか。


「運命の少年」だとか言われて、自分は特別なんだと思ってはいなかったか?


心を折る戦いで、結局折られそうになってしまったのは自分の心だった。


無力で、たった一人の人間すらも救えない、くだらない人間なんだと思い知らされたような気がした。