お互い、うつむいたまま。
片言の日本語が、リビングに漂っている。
この重苦しい空気。
なんとか、払いのけなくちゃ。
「門の前で、黒い車に乗っていた人。
綺月君の、知り合いの人?」
「……ああ」
……
……
ひゃっ。
会話、終わっちゃった。
「カ……カッコいい……人だね」
「心美、ああいうのがタイプなわけ?」
ひぃえ~~。
会話に困って、何んとなく言っただけで。
特に、タイプではないです……。
「ち……ち……違うよ」
なんで私、顔の前で両手を振って、
必死に否定してるんだろう。
自分でも、この感情がなんなのか。
全くわからないよ。



