なぜか、どんどん早まる心音。

 意味不明に顔の温度が上がる。



 ザワザワした心を鎮めたくて、
 リビングから逃げ出そうとしたのに……


「心美……」


 自信なさげな綺月君の声に引き留められ。

 ドアの前で、振り返った。





「弁当の……ことだけど……」


「綺月君の分まで作っちゃったけど……
 迷惑だった?」


「へ?」


「皆川くん達に……
 お弁当のことで……
 何か言われてたでしょ?」



 綺月君……
 嫌そうな顔してたから……



「あれは、アイツらに
 彼女の手作り?とか聞かれたから」


「ごめんね。明日からは、
 綺月君の分は作らないようにするね」




 苦笑いを残して、
 自分の部屋に逃げ込もうと思ったのに。


「迷惑じゃ……ねえし……」


 え?


「すっげー……うまかったし……」


 予想外の言葉に、足が固まった私。



「弁当だけじゃなく……
 朝ごはんもうまかった……」


「明日も、作っていいの?」

 綺月君の分の、お弁当も。


「ああ……頼む」