「で、氷牙はやるって言ってるのかよ?」


「綺月が、ステージに立つならって」


「やんねぇぞ。俺」


「俺たちと一緒に、
 ステージに立ちたくないの?綺月は」


「は?」


「曲を作っただけで、注目されない。
 そんな人生、
 綺月には物足りないんじゃないの?」


「……そんなこと……ねぇし」


「綺月が一般の高校生に
 埋もれているなんて、もったいないよ」


「俺が選んだ……道だし……」


「ま、考えておいて。
 でも、書道ライブで使う曲は、
 綺月に作曲してもらうからね」


「作んねぇって言ったら?」


「心美ちゃんとのデート代、
 稼がないといけないくせに」


 う……俺の弱点。

 いっつも
 つついてくるんだよな。千柳は。



「じゃあ綺月、帰ろっか。
 大好きな姫の元へ
 王子様を送ってあげるね」



 ギラギラな太陽みたいに輝いて微笑む
 千柳を見て、目を細めた俺。


 やっぱり……

 心がズタボロ覚悟で、
 氷牙に相談すればよかったな……