「綺月が困ってる。かわいい」
「俺の頭、撫でるな!」
『千柳様、ペアチケットのご用意ができました』
「せつな、ありがとう。
綺月のスマホに送っておいて」
「絶対に俺は、行かねぇからな!!!」
水平線まで届きそうなほど、
大声で叫んだ俺。
その時。
ニコニコ顔の千柳が一変。
瞳を灰色に濁らせ、
ゾンビのような不気味な笑みを浮かべた。
「せつな~
俺が綺月に貢いだ金額、読み上げてくれる?」
『かしこまりました。千柳様』
なんだよ、それ?
『本日。コーヒー代、620円。
場所代、1万円』
「場所代って、なんだよ?」
『今、綺月様がいらっしゃる、
ベンチの上でございます』
「はぁ?」
『いつでも使って良いと言われておりますが。
龍牙様の私有地ですので。
1時間1万円で、お借りしております』
この、ボロボロのベンチの上が。
1時間、1万円?
誰だよ! ぼったくり魔の龍牙って!



