「それに俺……心美に……
キス……しそうになった……」
「へ? ちょ……ちょっと待って。
展開、早くない?」
「だって……心美が……
すっげー近くで……俺を見つめたから……」
「それは、惑わされちゃうね」
「でも、キスはしてねぇからな。
顔を腕で隠して……拒否られたし……」
「あらら……
それは……痛すぎ……」
自分で体験したかのように、
苦しそうに顔を歪める千柳。
それを見て、
俺の心がギューっと痛みだす。
「あ、でも。
念願の同棲がスタートしたんでしょ?」
「同棲って、カップルがするもんだろ。
俺らは、お試し同居!」
「心美ちゃんと並んで、
一緒に料理作ったりした?」
「それは……ないけど……」
「綺月~。他に何か、ありげな顔だね」
「俺の部屋で……
二人で……アニメ見た……」
「それで?それで?」
目を光らせて。
俺の方に体を乗り出して。
噂好きな女子かよ?
「それだけ……」
「え~?
綺月、リベンジしなかったの?」
「何のだよ?」
「だから、未遂に終わったキスのリベンジ」
「できるかよ。そんなこと」
「だね。それができるなら、
親同士をくっつけて
心美ちゃんと一緒に住んじゃおうなんて、
骨の折れることしなかったよね?綺月は」
う……
そこ、突っ込んできたか。
言い返せねぇ。
同じ高校に入ったのに、
心美に話しかける勇気がなくて。
千柳と氷牙と雪那に頼みまくって。
親同士をくっつける手伝いを、
してもらっただけに……



