「心美の隣に、いつもいる男……
実は……イケメンだった……」
「天音君だっけ?」
「ああ」
「俺もさっき車から見て。
磨けばダイアモンドみたいに輝くのになって、
思ったけどね」
は~。
やっぱり千柳は天音のこと、
富士山級の高評価をつけてたんだな。
「ヘタレな俺じゃ……
天音に勝てそうもない……」
「ぷっ」
「千柳、笑うな!」
ごめんごめんと、謝ってるくせに。
千柳の笑い声、
どんどん大きくなってるじゃん。
「中学まで、
生意気なくらい自信過剰だった綺月は、
どこに行っちゃったんだろうねぇ?」
確かに。
『女なんて興味ねぇ』って、
跳ねのけて生きていた俺。
中3の春。
名前も知らない相手に、一瞬で恋に落ちて。
それまで積み上げてきたものを、
俺は、躊躇なく捨てた。



