ぼっちのキミに毒はまり ゾルック 一人目




「綺月、はい。コーヒー」


「……おお」


「相変わらず、
 ありがとうが言えないんだから。綺月は」


 フフフと、穏やかに微笑んだ千柳に、
 何も言い返せなかった俺。


 コーヒーをすすり

 もっと砂糖をもらって来ればよかったと、
 後悔したのに。


「綺月、使うでしょ?」


 得意げな顔で、
 俺にシロップを差し出す千柳に


「だから、彼女づらすんなって」


 素直に言えないありがとうの代わりに、
 生意気声を吐き出す。




「そろそろ綺月に、白状してもらおうかな」


「何をだよ?」


「隣の県から俺を呼び出しておいて。
 だんまりは許さないからね」


「だから……」


「俺に『助けろ』って
 メッセージをくれたでしょ?」


 ああ……
 送ったけど……


「綺月が俺に弱音を吐くときは、
 相当ヤバいときだからね」



 気づいてた?と、
 千柳は俺を見て、笑ったけど


 俺のことを、ちゃんと
 わかってくれている奴がいることに

 心が、じんわり温かくなって

 逆に心が、弱く、脆くなる。




 夕日でキラキラ光る海が
 綺麗すぎるからか?

 それとも

 千柳がくれたシロップに、
 素直になる毒でも混入されていたのか?


 俺の口が、心の声を吐き出した。