いつも俺は、
自分の席で男子6人とお昼を食べる。
心美はというと……
「お待たせ、心美ちゃん」
は~。
出た、出た。
井戸から出てきそうな、陰気な幽霊が。
いつものように、
お弁当を持って心美に近づいたのは。
目が全く見えないくらい、前髪が長くて。
胸辺りまである髪を、
だらしなく後ろで一つ縛りをしている。
隣のクラスで、心美の唯一の親友。
『天音』
地味。暗い。覇気がない。
笑わない。話さない。目も合わせない。
コミュ症なんじゃねえの?って思うほど、
人間拒否。
でも、心美にだけは別。
笑い声を含ませながら、
アニメの話で
心美と盛り上がったりしている。
心美にアニオタ仲間がいて良かったね。って?
良くねえよ。
だって天音は、『男』だから。