俺の想像通り
吸血鬼の前に
ヒロインの魔法使いが現れて
二人で敵から逃げおおせたけれど。
アニオタ界で語り継がれるであろう、
この名シーンより
背中を丸めて
声を殺して泣いている心美の方が、
見ていて、よっぽど心を打たれる。
って……
もう、エンディングかよ。
アニメ、終わっちゃうじゃん。
心美と一緒にいられる口実が、なくなるじゃん。
俺の肩が、
わかりやすく沈んだと同時。
「綺月君……」
突然振り返った心美が、俺の名前を紡いだ。
俺の心臓が、今までにないくらい
爆音を上げて飛び跳ねて
深呼吸したくらいじゃ、収まらない。
いきなり
俺の名前なんて呼ぶなよ……
心の準備が、間に合わねぇから……