綺月君を見れば見るほど、
 心に溜まる真っ暗闇。


 追い出したくて、重い息を吐いたのに。


「心美ちゃん、お願い」

「今日の掃除当番、お任せしてもいい?」


 女の子たち3人に囲まれ

 心に、別の闇が入り込んできた。



 今週もかぁ。


「実は夜、塾のテストがあってね」

「早めに行って、テスト勉強したいんだ。
 ダメかな?」



 拝むように手を合わせ、私にニコっ。


 さっき、綺月君を落とすため使われた
 小悪魔スマイルが

 今、私に向いている。



 聞こえていたんだけどな。

 今から、カラオケに行くって。



 掃除してからでも、カラオケには行けるよね?

 先週も、私一人で、教室のお掃除をしたよ。

 
 でも、そんな思いは吐き出せなくて。


「お掃除、やっておくね」

 嫌われたくない時用の笑顔を、
 顔にぺたりと貼り付けた私。



「心美ちゃん、ありがとう」

 そう言って、
 逃げるように教室から出て行っちゃったけど


 こういう時にしか、友達扱いされない現実に
 胸がギューって苦しくなる。