「もう戻るわけ?」 「お母さんに着てもらうウエディングドレス、 まだ完成してないし」 『帰るなよ』とも 『俺のそばにいろよ』とも言えない、 情けない俺を見限るように、 心美はベッドを降り、ドアの方に歩き出す。 でも、ドアの前で振り返った心美が、 もう一度俺の前に戻ってきて。 温かい両手で、 俺の右手を包んできた。 「……何?」 うつむいて。 これでもかって程、顔を真っ赤にして。 どうしたわけ?