俺がため息交じりで
うつむいていると。
心美が、途切れ途切れの声を発した。
「お母さん達……
よりが戻ったみたいで…
良かったね……」
「ああ」
俺の父さんと広美さんは、
心美の家で暮らし始めた。
でも、籍は入れないって決めたらしい。
「それでね……
お母さんたちのために……
サプライズ結婚式をしたいんだけど。
どうかな?」
「場所は?」
「お母さんが働いている結婚式場の
支配人さんが、
ガーデンチャペルを使っていいって
言ってくれて」
「父さんたち、喜ぶんじゃねぇ?」
まだ、心が重くて。
心美を瞳に映すことすらできない俺。
離れて座る心美との距離を
縮められない俺に、
「部屋に戻るね」
寂しそうな心美の声が届いた。



