「あらら。
また、わめいてるの?」
願っていた救世主が、
ドンピシャなタイミングで現れた。
リビングに入ってきたのは、
優雅な笑みを浮かべた千柳さん。
ケンカの止め方がわからず
困惑気味の私の頭に、
千柳さんは、ポンポンと手を乗せた。
「心美ちゃん、俺の部屋においで」
「え?」
「壁いっぱいの大きなスクリーンで、
ヴァン様を堪能させてあげるから」
千柳さんに肩を抱かれて。
ホールド状態。
私の力じゃ逃げ出し不可能と、
脳が早くも諦めモード。
強引に引っ張られているし。
ひゃぁぁぁ!!
このままじゃ、千柳さんのお部屋に
連行されちゃうよ!!
助けて!! 綺月君!!
「せ~ん~りゅ~う~」
綺月君は
恨みたっぷりのゾンビ声で、
私の肩に添えられた千柳さんの手を
引き離してくれた。
ホッと一安心。
したのに……
綺月君の瞳に宿る怒りが、
千柳さんを呪い殺しそうで。
どう鎮火すればいいかわからない。
千柳さんが来る前の方が、
まだマシな状況だったような……



