私が記憶を巻き戻している間も、
 二人の口論は続いたまま。

 収束する気配は、一切ない。




「だいたいね、
 綺月君は心が狭すぎなの」


 冷酷な天音君の声に、
 吐き捨てる様な、綺月君の声が続く。


「は?」


「遊園地で心美ちゃんが
 男の人と一緒にいたのだって。

 その人が落とした結婚指輪を、
 探してあげただけなのに。
 あんなに怒って」


「それは悪かったって、心美に謝ったし」



「前の学校で
 『綺月君が美女と歯ブラシ買ってた』
 って、噂になってたのに。

 否定すらしなくて。
 心美ちゃんを心配させて」


「だからあれは、
 マネージャーだったんだって。
 心美がその噂を信じてたなんて
 思わなかったし」




「心美ちゃん、
 本当に綺月君が彼氏でいいの?」


 ひょえ?

 天音君、いきなり私に
 話を振らないでよ!



「心美、
 天音と親友の関係、今すぐ切れよ!」


 ひょえええ?

 綺月君、そんなことできないよ。



 綺月君に嫌われたくない。

 天音君を怒らせたくもない。



 うわ~。

 誰か……
 助けてください!!