「天音、
 オマエはリビングから出て行け」

「僕が先に約束したんだからね。
 心美ちゃんに、アニメ一緒に見ようって」



 ただ今の時間、夜の9時50分。

 千柳さんの家のリビング。



 目を吊り上げた美男子二人が、
 私を挟んで立ち。

 グルルグルルと、
 獣みたいに睨みあっています。


 猛獣の名は、
 『綺月君』と『天音君』





「俺の心美に近寄るな」


「僕の精神安定剤を取らないでって、
 約束したよね?」



「天音は心美の親友。
 俺は心美の彼氏。そうだよな?」


「彼女を自分の所有物みたいに扱う男に、
 心美ちゃんを譲る気なんてないんだけど」




 わぁ~~。

 今夜も、綺月君と天音君のケンカが
 勃発しちゃったよ。



 千柳さんの家に引っ越して、
 1か月が過ぎたけれど。

 『彼氏』対『幼なじみ』のバトルは、
 毎晩のこと。


 いや、夜だけじゃないか。


 朝も。学校でも。

 綺月君と天音君は喧嘩ばっかり。



 その内容のほとんどが、
 私がらみという現実に。

 申し訳なさで、胃に穴が開きそう。