「綺月君……
離れて……ください……」
「どうして?」
どうしてって……
「心美は、俺に離れて欲しいわけ?」
「……うん」
「俺は触れたくて、たまんないんだけど……」
自信なさげに揺れる、綺月君の瞳。
ゆっくりと伸びてきた綺月君の長い指が、
私の唇をなぞった。
「俺に食べられたくなかったら、
今すぐ俺の前から逃げろよ」
綺月君の腕がスッと落ち、
いつでも逃げられる状態。
逃げられるはずなのに……
綺月君の指の温度を感じてしまった
私の唇は、何かを期待してしまう。
「心美は俺に、
離れて欲しいんじゃなかったのかよ?」
ひゃッ。
ずるいよ。その表情。
イジワルそうに微笑んで。
私を見つめる瞳の熱が、
温かくて。優しくて。
綺月君を拒みたくないって、思っちゃうよ。
「離れて……欲しいけど……」
「けど、何?」
――私の唇に触れて欲しいな。



