「そんなこと、できるわけねぇじゃん」
「最後の……お願いに……するから……」
「だから、殴れねぇって……」
「じゃあ……
綺月君の手……貸して……」
俺は、抱きしめていた腕を緩めた。
逃げるように
俺の胸元から離れた心美。
ベッドに座る俺の前に、立つと。
涙をこぼしながら、俺の手首を掴んだ。
え?
驚いた俺の声と重なった
『パチン』という音。
手に痛みを感じ。
顔を歪める心美が目に入り。
やっと、この状況がわかった。
俺の手が、心美の頬を叩いた。
しかも、思いっきり。
心美は、何度も何度も。
俺の手を使って、
自分の頬を痛めつけている。
「心美、何やってんだよ」
意識がはっきりして。
俺はやっと、
捕まれていた手を振り払ったけれど。
崩れこむように、床に座り込んだ心美に
これ以上、かける言葉がみつからない。



