笑いがやっとおさまった天音。

 王子様級の優しい笑顔を添えて、
 俺の目を見つめてきた。



「心美ちゃんのこと、よろしくね」


「まだ、許してもらえるか
 わかんねぇけど」


「ちゃんと、綺月君の想いを伝えれば大丈夫。
 心美ちゃん、優しい子だから」



 微笑む天音を見てると、
 本当に大丈夫って気にさせられる。


 不思議な魅力を持ってる奴だよな。
 天音って。



「俺、心美のとこに行ってくるから」


「綺月君、頑張ってね」




 俺が階段を降り切って
 曲がろうとした時

「綺月君!」

 後ろから、
 真剣な天音の声が届いた。



「何? 天音」


「うさん臭い占い師に伝えておいて」


 千柳に?


「『二度と、僕の前には
  現れないでください』って」


 へ?


 意味がわかんなくて。

 どういうこと?って、
 こぼれそうになったけど。


 俺の口が開く前に、
 天音はドアを開け、屋上に消えていた。