夕日が差し込む教室で

 黒板を拭きながら、綺月君の帰りを待つ。



『いいわけ?』

『俺が……立花の唇……奪っても……』




 頬を赤らめた綺月君が、
 脳内スクリーンに勝手に映し出され

 
 自分の物とは思えないほど、
 心臓が飛び跳ねて……困る。




 冗談で、
 甘い言葉なんてささやかないでよ……



 私なんて、
 クラスの男子にも女子にも相手にされないような
 ボッチの地縛霊なんだから……



 ドキドキに
 襲われっぱなしだったけれど

 掃除が終わっても、綺月君は戻ってこなくて。


 廊下に出たら、
 空のゴミ箱が、ぽつんと置かれていた。