「ウザいこと言ってないで。
 席戻れよ」


 
 女なら怖がって、退散するくらい。

 『俺に近寄るな』ビームで、
 明日華を睨んだのに。



 跳ね返す甲冑でも
 身につけてるのかよ?

 そう思うほど、明日華にはノーダメージ。


 逆に、ニヤリと口角をあげ、
 俺の耳元でささやいた。




「綺月、いいの?」


「は?」


「あのこと、バラしちゃうからね」



 あの……
 こと……?



 あ~!!

 完全に忘れてた!!



 俺、この女に、
 弱みを握られてるんだった!!




「あ~、もう。わかったよ」


「放課後、
 私とカラオケに行ってくれるの?」


「……ああ」


「ジャンピングLOVE、
 歌ってくれる?」


「俺の趣味じゃねぇし」


「じゃあ、シャーベットブルーの雫は?」


「気が向いたらな」





 明日華は無理やり、
 俺の小指に指を絡ませ。

「約束だからね」
 
 ルンルン顔で、席に戻っていった。




 放課後。マジで憂鬱。

 今すぐ帰りてぇ……