高校に入学した時。
俺の恋は、すでに
終わっていたのかもしれないな。
それなら心美の奴、
俺を見て顔を赤らめるなよ!
『好きになっちゃいそう』なんて
期待持たせるようなこと言うなよ。
単細胞な俺の脳は。
勝手に喜んで。浮かれて。
どんどんオマエのこと
好きになるんだから。
「広美さん。このお弁当箱、
洗ってもらってもいいですか?」
心美が遊園地に置き去りにした、
バスケットの中のお弁当。
俺一人で。遊園地のベンチで。
後悔しながら食べた。
帰ったら心美に、『ごめん』って
謝ろうと思いながら。
でも今は、心美を思い出す物を、
俺の視界に入れたくなくて。
「洗っておくね」
そう言った広美さんに、
お礼を言う余裕すらなかった。
そして心美は次の日も、
この家に帰ってこなかった。