冷静になんかなれなくて。
脳のマグマは、今にも噴火しそうで。
ひきつった顔のまま、心美に近寄る俺。
「ちょっと来い!」
「あ……綺月……君?」
デートDVで通報されても
おかしくないほど、
俺は怒りを露わに
心美の腕を引っ張った。
それなのに。
男にぺこりとお辞儀をした心美に、
さらに俺の怒りが募っていく。
俺は人気のない繁みの前で、
心美の手を離した。
「誰? 今の」
「え……と……。あの……」
そんなに言いたくない?
ごもるほど、俺が怖いわけ?
「いきなりいなくなるとか。
マジで、ありえねぇんだけど」
「ごめん……なさい……」
今にも泣きどうなほど、
震える心美の声。
俺に顔が見えないように、
うつむいたまま。
「すっげー、探したんだからな」
「綺月君に……
声をかけようと思ったんだけど……
曲作りの邪魔しちゃ悪いかなって……」
「勝手にいなくなられる方が、迷惑だし」
「ごめんなさい……」
心から反省してます。
全身で訴えている心美。
そんな心美を前にしても、
俺の怒りはおさまってくれない。



