視界が良好すぎて。
 いつもと違いすぎて、ソワソワ。

 勝手に視線が下がってしまう。


 くるぶしまでのワンピースがふわっと揺れて。

 足首が風を感じ、落ち着かない。



 手作りのお弁当が入ったバスケットを
 手に持ち、じっと見つめていた時。


「早すぎ」


 呆れ笑い付きの、優しい声が耳に届き、

 魔法をかけられたように、
 ゆるっと、私の口角が上がった。

 


「綺月君も早すぎだよ」


 私の腕時計。
 約束の時間の25分前を指しているよ。



「俺は……」


 綺月君、吠えちゃうかな?

 たまたま、早く着いただけ!って。



 照れ隠しで吠えるワンコを、
 想像していたのに。


「遊園地……楽しみだったから……。
 心美と来るの……」


 予想を裏切る、甘い言葉に。

 私の脳が、パニック状態。