「綺月、カバン取ってくるね」
「ああ。俺も」
自分の席の荷物を取りに、離れた二人。
その時、綺月君が、
私だけに聞こえるように、囁いた。
『俺、今夜帰らねぇから』
……
……
それって……?
明日華さんと、
一晩一緒にいるってこと?
いきなり震えだした、私の体。
腕をさすっても、さすっても。
不安な気持ちは増すばかり。
「綺月、早く行こう」
「明日華待てって。
荷物詰めてんだから」
明日華って……呼び捨てにした……
今までは、
苗字で呼んでいたのに……
いきなり縮まった、
綺月君と明日華さんの距離。
動揺しすぎて、
胸がえぐられるように痛みだす。
固まったままの私を残して、
二人は並んで、教室から出て行った。