「綺月君との同居、うまくいってる?」
「あ……うん。
ちょっとは慣れてきたかな」
言えないよ。
天音君にも絶対に言えない。
曲作りを手伝うために、
綺月君に抱きしめられたり、
キスされちゃったことを。
誰にも聞かれたくなくて。
私も、アリさんの会話並みの
ヒソヒソ声を返す。
「綺月君ね、今朝
朝ごはんとお弁当を作ってくれたの」
「ちょっと安心した」
え?
「心美ちゃんを泣かせたら、
階段から突き落としてやろうかと
思ってたから」
あ……あ……天音君。
真っ白の歯が輝くほど、
口元は笑っているのに。
地を這うような低い声。
怖いんですけど……
でも、天音くんは幼稚園の頃から
ずっと優しいんだよね。
小2でお父さんが亡くなった時も、
泣いている私の頭を
ずっと撫でてくれて。
私が辛いときには
助けてもらってばっかり。



