心美と同居してわかった、俺の生態。


 ――大好きな女と二人だけ。

 その状況が、俺を
 とんでもねぇ魔人に変えちまうらしい。



 怖ぇ。マジで怖ぇ。

 これからもこの家の中で、
 心美に何しでかすかわからねぇ。


 とりあえず今は、
 地の底まで落ちた俺の好感度、
 少しでも上げないと。



 自分の机に行き、
 吸血鬼のフィギアを持って心美の前に。


 テレを隠すため、
 不愛想な声になってしまう。



「髪……これでどう……?」


「ヴァン……様……?」


「心美の要望通りに
 カットしたつもりだけど」


「……」


「気に入らなかったら言えよな。
 新しいの……俺が買ってやるから……」



 心美の目じりが下がって。
 口元が緩んだ心美。


「綺月君。ありがとう」


「お……おう」



 俺、弱すぎ。

 心、奪われすぎ。


 俺だけにくれた宝物みたいな、
 心美の笑顔。


 そんな贅沢な笑顔に、
 俺がときめかない筈もなく。

 インフル?と心配になるほど
 体中の熱が、一気に上昇。


 ウイルスをやっつけるかのように、
 心臓も勇ましく飛び跳ねだしたけど。

 心を鎮める特効薬なんて
 持っていない。



 なんか、ヤバい気がする。

 また、暴走しそうな気がする。



 冷静な自分を装いたくて、
 ぶっきらぼうな声を吐いた。