東京ヴァルハラ異聞録

第二陣はほんの一瞬の勝負。


千桜と大塚には精密な動きが要求されるが、二人とも密偵として名を馳せた男達だ。


やってくれると久慈は信じていた。


「……申し訳ありません。僕は今の精神状態では出来そうにありません」


美姫を心配するあまり、作戦に支障が出ると感じたのだろう。


千桜が延吉の前に歩み出て、頭を下げた。


「この中で、魂の鎖で一番上手く人を操れるのは延吉さんです。お願いします……僕に魂の鎖を付けて、操ってください」


突然の申し出に、一番驚いたのは延吉だった。


「いや、それは……構わんが。じゃが、本当に良いのか?この戦いの行く末どころか、自分がどうなるかすら、死ぬまでわからなくなるぞ」


「構いません。そうでなければ、僕は美姫さんを心配して上手く戦えませんから。お願いします……」


魂の鎖に、自ら繋がれるという選択をした千桜に、延吉も頷いた。


この男は、皆の為に自分の命を犠牲に出来る男だと。


以前戦った時も、自らの命を捨てて仲間を助けた。


実に天晴な男だと、内心思っていたから。


「どれ……用意してやるわい。皆に別れは済ませなくて良いのか?」


そう言い、PBTを操作して禍々しい鎖に繋がったマスクを取り出した。


「皆さん、元の世界に帰りましょう!わたるくん達ならきっとやってくれるはずです!美姫さん……信じてますよ」