東京ヴァルハラ異聞録

「すみません。いつもの癖で。緊急にお知らせしたい事があったんですが、お取り込み中だったもので」


こんな時にでも丁寧な大塚に、名鳥は感心しながらも、緊急の知らせとは何なのかという事が気になった。


「緊急なら早く言いなよ。朝倉ちゃんからの連絡なんだろ?」


「いえ、これは西軍の久慈さんからなんですが……『このままでは消耗する一方だ。一気に決着を付けるから、両国駅に集まれ』との事です。では、伝えましたので私はこれで」


そう言って、あっという間に姿を消した大塚。


小太りなのに、よくもまあそんな速度で動けるもんだと、さらに感心した。


「……一気に決着って、何をするつもりかね?久慈の事だから、またとんでもない事を考えてるんだろうけどさ」


「何だっていいさ。外に残った意味があるってんならさ。皆が集まるなら、雪子ちゃんも大友も文句は言えないよね」


ニヤリと笑った名鳥に、やれやれと言った様子で雨村と大友は首を横に振った。


「ホント、嫌になるね。でも……『バベル』からの腐れ縁ってやつかね?仕方ないさね。最後まで付き合ってあげるとしますか」


「悪いね。帰ったらビール一杯奢るからさ」


「あんたね、一晩分くらい奢らないと怒るからね、私は」


そんな話をしながら、笑ってはいたが、すでに三人は命を捨てる覚悟をしていた。


塔に挑んだ昴達が、元の世界に帰してくれると信じて。


その事を、誰も疑っていなかった。