東京ヴァルハラ異聞録

「何っ!?どこにいると言うの!?」


俺の言葉で一瞬足を止めた月影。


だが、それは狩野が背中を押した事で解消された。


階段を掴んでいるビショップゾンビの一部。


それが、グッと力を入れて、身体を上方へと押し上げたのだ。


ビショップゾンビの腕が、そこを通り掛かっていた麻衣を掴みに掛かる。


あまりにも突然の出来事で、麻衣の反応が遅れた。


「えっ?」


「あ、危ねぇっ!」


逃げ遅れた麻衣の腕を掴み、力強く引き寄せたのは……三原。


だが、ビショップゾンビの手は、その三原を掴んでしまったのだ。


「ぐううっ!!おい、早く行けっ!!何してやがる!!」


「え……み、三原さん。どうして……」


「どうしてって……そんなの決まってだろ!女を見捨てて逃げるようじゃあ、侑樹ちゃんに怒られちまう……そんなやつにはなりたくないんでね!」


恐らく、ビショップゾンビの手の中にいる三原は、今、こうしている間にも溶かされているのだろう。


「麻衣!走れ!三原の想いを無駄にするなっ!!」


「三原さん……ごめんなさい!」


三原の身体から、メキメキという音が聞こえる。


身体が握り潰されている音だろう。


それでも、麻衣が階段を駆け上がっている姿を見て、三原は満足そうだった。