東京ヴァルハラ異聞録

ビショップゾンビの一部が、俺に向かって手を伸ばして来る。


それを斬る事は出来ない。


鞘と日本刀の背を使い、攻撃を横に逸らす。


これは……思ったよりも大変だぞ。


相手は脆く、自分の身が壊れる事を気にも留めていない。


それなのに攻撃の破壊力は凄まじい。


たとえるなら、投げ付けられた豆腐を、形を崩さずにキャッチするに等しい。


繊細な力加減が要求される!


「なかなかやるな、昴。あの絶妙な力加減は誰にでも出来るもんじゃない。強ければやつの身体を傷付けて血を浴びる。弱ければ攻撃に負けて殺られる。そんなギリギリのところで戦ってるわけだ」


「ほう、拓真少年にもそれがわかるか?ならば、お前にも出来るのではないか?」


「冗談だろ?俺は繊細とは程遠いの。そういうあんたは出来るのかよ、恵梨香さん」


「いや、私は何事にも全力でやるタイプだからな……」


なんて話がされているなんて思いもせずに。


月影達はどこまで逃げたと、階段の方を見てみると、一階分上の階段に。


だが、そこに、思いもよらぬ物が迫っていたのだ。


「まずい!!こいつの半身がそっちにいる!!」


この位置では、恵梨香さんがいる場所からは、柱が邪魔で見えなかった!


それが、月影達に襲い掛かろうと、階段に手を掛けて垂直方向に移動していたのだ。