東京ヴァルハラ異聞録

「どうしたの乃亜ちゃん。疲れた?」


沙羅が気を遣って声を掛けるが、月影は首を横に振って。


「違う……感じるの。この上に何かいる……」


その言葉に、果てしなく続く塔の上を見上げた俺達。


螺旋状に続くこの階段は手すりも何もないから、上を見ていると落ちてしまいそうな感覚に襲われてしまい、すぐに足元を見た。


「ああ、この上にはクイーンが待ち構えている。月影がそう感じるという事は、頂上も近いという事か?」


ゴールが見えたと言わんばかりに恵梨香さんが笑って見せたが、どうやらそうではないみたいで。


「違う……何かが降りてくる!」


月影が叫んだその言葉で、俺は日本刀を握り締めてもう一度上を見た。


だけど何も見えない。


月影は一体何を感じているのか。


俺だって嫌な感じはしているけど、そこまでハッキリとわかるわけじゃない。


「……何も来ないじゃない。さては、ビビってる?」


クスクスと笑いながら川本がそう言ったけど、月影の様子を見たらそんな感じではないんだよな。


「ん?今、何か落ちたか?」


三原が、柱の近くを眺めて不思議そうに首を傾げた。


俺はそれを見ていなかったからわからなかったけど、こんなところを落ちる物なんてあるのか?