東京ヴァルハラ異聞録

「ぬうっ!フェンリルめ、呼びおったか!!」


フェンリルを倒す絶好の機会を目の前にしながら、降り注ぐナイトのあまりの多さに、オーディンは槍を上空に構えていた。


少しでも数を減らさなければ、ポーンの群れでさえ必死な人達が、あっという間に蹂躙されてしまうだろうから。


「大丈夫です!!一体一体撃破すれば、ナイトなど恐れることはありません!!光輝!秋田!早希!前へ!」


桜井が指揮を執る南軍の部隊が、ナイトの群れを相手に戦闘を開始する。


「昴達が頂上に行くまで、俺達も死ねないな。やるぞ、早希、秋田さん!」


「うん、絶対に生きて、その時を迎えようね」


「これ以上、化け物共の好きにはさせねぇよ」


皆、死を覚悟しなければならない局面でも、死ぬ事を考えてはいない。


考えているとすれば、それは一つだけ。


元の世界に帰るまで、絶対に化け物に負けないという事だけだった。


「フッ……フェンリルよ。どうやら人間達は貴様に臆してはいないようだぞ?絶望などしない!!あるのは目の前に輝く希望だけじゃ!!」


オーディンがスレイプニルを駆り、フェンリルに向かって走る。


迫る大きな口に、グングニルを構えて。