東京ヴァルハラ異聞録

「造りは前回と同じ……か。この塔は本当になんだというのだろうな」


フフッと笑い、恵梨香さんが階段へと歩き出す。


「まさか、バベルの塔を階段で上るわけ?頂上までどれくらいあるかもわからないのに……」


「エレベーターでもあれば楽なんだろうけど……この構造だとそうもいかないよな」


見上げると、バベルの塔の内部が見える。


よくこんな構造で建っているなというほどの空洞で、その中心に柱があるだけ。


「言ってても始まらん。黒井がビショップになったと言うなら、この先待ち受けているのはクイーンだけだ。前回は不覚をとったが、今回はそうはいかん」


クイーンか。


チェスでは縦横斜め、自在に動ける最強のコマ。


この先にいるクイーンの強さも最強だとしたら、俺達で勝てるのか。


いや、勝たなければならないんだ。


負ける事は考えるな。


「ここまで来たんだね。昴くんと出会わなかったら、沙羅はここに来る事も出来なかったかもしれない。ありがとうね」


俺の手を握り、そう呟いた沙羅。


「ありがとうはまだ早いだろ?元の世界に戻って、また会えた時に聞くから」


そう言うと、沙羅は笑顔で小さく頷いた。