東京ヴァルハラ異聞録

それから少しして、フェンリルが動き始めた。


西軍の方を向き、ひと吠えすると、今にも飛び掛かって来そうな体勢に移行したのだ。


「お、御田さんはまだか!開戦を前に壊滅なんてごめんだからな!」


大剣を取り出し、久慈さんが叫んだ。


……いや、感じる。


御田さん……オーディンは近くまで来ている!


「久慈さん!来ますよ!!戦闘が始まるっ!!」


俺がそう叫んだ時だった。


高いビルの上にいると言うのに、さらにその上を飛び越えた何か。


その影が俺達を横切り、慌ててそれを目で追う。


「八本脚の軍馬……スレイプニルか。私達は歩兵だというのに、大した登場だな!」


恵梨香さんがそう言うと、スレイプニルに乗ったオーディンが、フェンリルに向けてグングニルを投げ付けた。


だが、それはフェンリルに噛み付かれ、動きを止めたのだ。


「今こそ戦いの時だ!!ヴァルハラで培った俺達の力を、今こそ発揮する時だ!!」


「久慈さんこそ、道化が板についてますよ」


「茶化すな!俺達も行くぞ!」


その言葉を合図に、俺達はビルを飛び降りた。


壁面を駆け下りて、地面を目指す。


いよいよ、最終戦争が始まった。