東京ヴァルハラ異聞録

「そ、そんな……俺はそんな大層な人間じゃありませんよ。ただの高校生ですし……」


「昴少年。お前がただの高校生でなかったなら、きっとこうはならなかっただろう。弱く、脆い少年だったからこそ、皆の心を動かしたと考えられないか?そこに、ほんの少しの勇気と希望があったから、ここにこうして立っているのだ。さあ、声を届けてやれ。時間がない」


演説なら、恵梨香さんの方が俺なんかよりもよっぽど向いてる気がするよ。


でも、声を届けたい人達はいる。


今から皆に話しに行っている暇はない。


「じゃあ、少しだけ」


四つのPBTに囲まれた真ん中で、一つ咳払いをして。


「え、えっと。こんにちは、結城昴です。ここに来るまでに、色んな事がありました。大切な友達と殺し合った事、守りたいと思った人を守れなかった事、頼れる人を失った事……」


この街に来てから、本当に色んな事があった。


多くの死に触れ、そして俺達は強くなっていったんだ。


「でも、それは今ここに立つ為の試練だったと、俺は思っています。あの時、あの人を失わなければ……あの人に勝てていれば。別の未来が待っていたかもしれません。だけど、その未来だと同じようにここに立ってはいなかったはずです」