東京ヴァルハラ異聞録

「では、言うが良い。オーディンが来れば戦闘が始まる。それまでに、少年の想いの全てをぶつけろ。ここに集まった人々を奮い立たせてみろ」


そう言い、恵梨香さんがPBTを俺に向けた。


「あれ?全軍通信って、自軍じゃなきゃ出来ないんじゃなかったっけ?私の情報って古い?」


神凪が恵梨香さんに尋ねると、小さく頷いた。


「本来は……な。だがここは、軍の境界が曖昧な場所だ。自軍の端から端まで……とはいかないが、500m程なら届く。今はそれで十分だ」


結局……俺はこの街のシステムを完全には把握していなかったな。


いや、恵梨香さんが知りすぎているだけか?


「それなら俺もお前の声を届けてやる。最後の戦いの前に、言いたい事があるなら言いやがれ」


秋本も恵梨香さんと同じようにPBTを俺に向けた。


「そうね。七花ちゃんやマスターから話は聞きました。ここに至るまでにあなたが起こした奇跡の数々、私達はそれに賭けます」


朝倉もまた、PBTを俺に向ける。


「く、久慈さん……どうして俺なんですか」


「これほど多くの人間を動かしたんだ。お前しかいないだろう。俺では、秋本どころか、ここにいる誰の心も動かせなかっただろうからな」


そう言い、久慈さんまで俺にPBTを向ける。