東京ヴァルハラ異聞録

「これは……どうしたってんだ一体さ」


俺と黒井の戦いを見ていた名鳥が声を上げた。


「気付いたか名鳥。ここは東軍……だと言うのに、黒井が回復している様子がない。もしややつは……」


「……恵梨香ちゃん。なんだか思い出さないか?昔、黒井と真治が南軍で決闘をした時の事をさ」


「ああ。あの時から黒井は、真治少年との再戦を望んでいたのだろうな。恨みや憎しみではなく、ただ一人の男として」


ほんの数秒。


黒井と対峙して僅かな時間しか流れていないのに、随分長い時間が経過したような気がする。


そして……その均衡が崩れる瞬間が訪れた。


黒井が動きを止めたまま、ゆらりと揺らめく。


これは……殺気の分身!!


それに気付くまで、ほとんど時間は掛からなかった。


素早く身体を右に向け、日本刀を振り下ろした。


俺に迫っていたランスを上から叩き付け、地面を穿ち動きを止める。


「なにっ!?」


これに反応出来た事を驚いているのか、黒井が声を漏らす。


ランスを叩き付けた日本刀を横に振り、黒井の肩へと滑らせた。


屈むにも、ランスの柄が邪魔になって回避出来ないだろう!


もらったっ!