東京ヴァルハラ異聞録

それに、派手に暴れて警察に追われる立場になれば、もう一人の自分に迷惑がかかる事は明白。


「……しくったな。俺、テレビ中継されてるじゃないか」


「ああ、ド派手に映ってたぜ。でもまあ、顔まではわからなかったから安心しろよ。黒井の野郎がメインだったからな」


だと良いんだけど。


スカイツリーの方向、ひたすら移動を続けて、俺達は隅田川までやって来た。


やはり両国国技館にバベルの塔はなく、これが普通だというのに違和感さえ覚える。


「バベルの塔も、光の壁もないわね。それだけで随分世界が広く感じる」


「何言ってんだ。元々世界は広いだろうが。ヴァルハラが狭すぎるんだよ。あの箱庭は、俺達を殺し合わせる為の場所に過ぎねぇ」


明の言うことも、秋本の言うことも良くわかる。


青く澄んだ空に、人々の息遣いを感じる東京。


ヴァルハラとは違った、「生」をしっかりと感じる世界。


そこに、死をもたらすビショップという怪物がいる。


それは、止めなければならない存在だ。


「ん?おい、なんだあれは」


秋本が顔をしかめて指差した。


それはスカイツリー。


その展望台の付近で、チカチカと光が見えたのだ。