東京ヴァルハラ異聞録

俺達は移動を開始した。


ビショップが飛んで行った方に向かおうと。


「この世界で、こんなに派手に飛び回って大丈夫ですかね!?」


「心配する事はないわ。この速度なら、肉眼では捉えられないはずだから。あなたもわかるでしょ?ヴァルハラで、弱い時に見た、強い人達の動き。何をしたかわからない……この世界の人達には、私達が何をしているかなんてわからないわよ」


なるほど、そう言われればそうかもしれないな。


道行く人達は空を見上げてはいないし、誰も俺達がビルの上を跳んでいるなんて気付いてもいない。


「……もしもビショップを倒したら、俺達はどうすればいいんだ?ヴァルハラに戻れるのか?」


「何を言っているの?ここは元の世界なのよ?脅威を排除したなら、元の生活に戻れば良いだけじゃない」


「元の生活ね。でもよ、今の俺達は一体何なんだ?俺は、俺をヴァルハラを誘ったツレを、この世界でもヴァルハラでも見てるんだぜ?俺が二人いる事になるのか、それとも『俺』に俺が戻ったのか、どっちだ?」


……一瞬、秋本が何を言っているのかわからなかったけど、考えてみると本当のところはどうなんだろう。


もしも前者で、自分が二人いるという事になったら、元の生活になんて戻れないんじゃないのか?