東京ヴァルハラ異聞録

「騒動とは失礼な。南軍で存分に戦い、バベルの塔に向かう仲間を集めたが……どういうわけか、仲間が一人も集まらなかっただけだ」


きっと、南軍の人間を怒らせたんだろうなと、そこにいる誰もが思った。


恵梨香は壊滅的に交渉が下手で、相手を逆上させてしまう事が多々あるから、誰も期待はしていなかったが。


「その性格は相変わらずだねぇ。美人なのに、わざわざフルフェイスなんて被ってるし、黙ってりゃ良い女なのに、喋りがどうしようもないし。やっぱり真治がいなきゃ恵梨香ちゃんはダメなのかね?」


「むっ、雪子。それは私に何もするなと言っているのか?せっかく帰って来てやったのに、何という言い草だ」


さすがに恵梨香も怒ったのか、雨村を指差して歩み寄る。


「そりゃあ戻って来てくれないとさ。キングが破壊されたら今までの努力が水の泡でないかい?」


「まあ、それはそうだな。だが、心配する事もあるまい。名鳥に狩野、雪子に大友、私がいればキングには辿り着かせんよ。それに……少年の気配を感じる」


そう言って、東軍の方を向いた恵梨香。


誰もが、同じようにその方向を見た時だった。


恵梨香が降り立った場所と同じ、ルークの上。


そこに、三つの影が現れたのだ。