東京ヴァルハラ異聞録

~東軍~


「後一時間程か……やれやれ、ここが正念場だな」


道に停まっている車に腰掛けて、名鳥はタバコを吸っていた。


目の前には巨大な岩の塊……ルークが休眠状態で、それを眺めるように見上げていたのだ。


「順一、タバコは身体に悪いって何度も言ってるでしょ?」


「へいへい。気遣ってくださって、我が嫁は優しい事ですな」


その隣に腰を下ろす明が、名鳥のタバコを取って携帯用灰皿に入れた。


「あーもう、見せ付けてくれちゃってぇ!独り身の私の身にもなれっての!」


そして、それを見ていた雨村が悔しそうに声を上げる。


「まあまあ、雪子ちゃんにもいずれいい人が現れるって。俺だって40近くまで独り身だったんだからさ」


名鳥にとって、雨村を宥めるのは日常茶飯事だったから、こういう話の返しも慣れている。


と、言うよりも、戦い以外の時はこういった話をして、少しでも緊張感を和らげたいと思っていた。


「……動き出したらまずいわね。すぐに倒さないとキングを破壊されてしまうわ」


ルークが休眠に入るまでの移動経路、そして、ここから推測されるルークが移動する方向を見て、明はそう呟いた。