東京ヴァルハラ異聞録

すでに服を脱いで、濡れた下着だけを身に付けた沙羅の後ろ姿。


ゆっくりと振り返った沙羅は、相変わらず寂しそうな目で。


「ご、ごめん!!先に入っちゃった!沙羅もシャワー浴びなよ!」


その目に戸惑った俺は、布団を捲ってベッドに飛び込んだ。


頭まで布団を被り、沙羅を見ないように。


「うん。ありがとう」


沙羅はそう呟いて浴室に入ったけれど、ありがとうなんて言われることを俺はしていない。


この状況に混乱して、テンパって、自分の事しか考えていないじゃないか。


浴室から聞こえるシャワーの男が部屋に響く。


身体を休めなきゃと思っているのに、それどころじゃない。


「落ち着け俺、落ち着け俺!こんな状況、初めてじゃないだろ!てか、あの時の俺!なんであんなに落ち着いてられたんだ!頭おかしいだろ!」


この街に来てから、それほど日数が経ったわけじゃないけど……沙羅の事はそんな日数に関係なく好きになって行ってる。


一緒にいると安らぐというか……沙羅の為なら何だって出来るような気にさせてくれる。


でも、この気持ちをどう伝えたらいいのか。


それすら俺にはわからないのだ