東京ヴァルハラ異聞録

「だったら俺も行く。お前といれば、黒井と出会えそうな気がするからな」


神凪と口論をしていたのに、急に俺に向かってそう言い放った秋本。


まあ、演説であれほど言っていたから驚きもしないけどさ。


「秋本さんが行くなら、残った俺達で北軍を防衛するしかないな。神凪さんがいるんだ。何とかなる」


将太が皆にそう言い、皆それには納得している様子。


ただ、唯一沙羅が寂しそうな目で俺を見ていた。


「とりあえず、身体を休めたら出発するぞ。三時間もあれば大丈夫だろ。どこかで適当に寝ておけ。集合場所は両国で良いだろ。その時に総力戦があるかどうかもわからねぇからな」


俺が何も言っていないのに、秋本がどんどん予定を決めて行く。


いや、まあいいんだけどさ。


「昴、バベルの塔に行く時は、俺も一緒に行くからな。その時までにはもっと強くなるから、お前ももっと強くなれよ」


拓真がそう言って、俺に拳を突き付けた。


思えば、拓真と麻衣に導かれてやって来たこの街。


恨んだ事もあったし、何度も武器を交えた。


それでもこうして、元の世界みたいに仲が戻って。


俺も、その拳に自分の拳を合わせて笑って見せた。