東京ヴァルハラ異聞録

「沙羅!こんな所にいた。何をしてるんだ?」


ゆっくりと近付き、そう尋ねると、沙羅はゆっくりと俺を見た。


「うん、昴くんを待ってたんだ。ここにいたら、会えそうな気がして」


髪を後ろに流しながら、微笑みを俺に向ける。


「……あー。じゃあ俺達は対岸に行くからな。ここはお前らに任せるわ」


空気を読んだのか、龍拳が頭をボリボリと掻きながら歩き始めた。


「えーっ。舞はここで昴くんといてもええねんけど」


「二人にしてあげようよ。皆が来るまでの少しの間くらいさ」


そう言った舞の背中を押して、麻衣が歩く。


皆……変な気を遣わなくても良いのに。


まあ、二人の方が話しやすい事もあるかな。


「あの日、ビショップが落としたルークが、この街の人間を苦しめてる。それだけじゃない。嵐丸さんも愛美もビショップに殺られた。悟さんなんて、死ぬ事も回復する事も出来ない状態で生き続けてる。早く終わらせないとな」


「うん。沙羅一人だと無理だったかもしれない。でも、今は昴くんがいるから。きっと何だって出来るって信じてる」


沙羅にそう言われると……照れるな。


出会った時と比べると、そりゃあ強くなった自信はあるけどさ。


当時は俺なんて足元にも及ばなかった沙羅に言われると嬉しくもある。