東京ヴァルハラ異聞録

「……見世物ではないのですが。だけど、そう思っているなら止めはしません」


月影から顔を背けると、千桜さんは歩き出した。


しばらく歩いて、やって来たのはビジネスホテル。


ここに悟さんがいるのか。


「千桜さん、悟さんはどんな状態なんですか?会いたいとは思ってますけど、あんなに会わない方がいいって言われたら……正直怖いです」


「……あの日、悟さんは悪魔と戦いました。攻撃を食らえば死という戦いで、なんとか生き延びようとしたんです」


フロントで鍵を取り、エレベーターへと向かった。


エレベーターに乗り込むと、再び千桜さんが話し始める。


「悟さんだけじゃなく、多くの人が悪魔と戦ったんです。だけど、皆殺されてしまった。悟さんも左腕をもがれ、右脚を失い、PBTで瞬間回復をした時でした。悪魔によって、PBTが破壊されてしまったのです」


瞬間回復は間に合ったのか、それとも間に合わなかったのか。


千桜さんの話からすると、間に合わなかったと考えた方がいいかもしれない。


「それで……どうなったのですか?回復出来たのならば、『見ない方がいい』とはならないでしょうし、出来なかったならばそのまま死ぬはずです」