東京ヴァルハラ異聞録

神田駅に近い交差点。


そこで立ち止まった御田さんが、俺を見てポツリポツリと話し始める。


「ここじゃよ。悪魔が降り立ち、皆戦いを挑んだ。腕をもがれ、足を吹っ飛ばされ、勝負にはならんかった。もう動けない人間に、やつは何をしたと思う?PBTを探し出し、それを踏み潰したんじゃ。四肢をもがれた人間に、助かる手段はなかった。頭部を潰され、心臓を踏み潰され、あるものは生きながらはるか上空へと飛ばされて落下した。その凄惨な現場じゃよ」


思い出したくもない記憶を、無理矢理引き出したせいか、御田さんの表情は険しい。


「……御田さんは戦わなかったんですか?御田さんなら、もしかすると……」


「過大評価はやめてくれ。ワシだって戦ったさ。じゃが、勝てんかった。腕と足を一本ずつ吹っ飛ばされて……逃げたんじゃからな」


御田さんでさえ勝てない化け物が、今の黒井というわけか。


「あんなのは人間が出来る行為じゃないですよ。まるで、虫の足を千切るように、平気で人の手足を……考えただけで震えが」


千桜さんも、肩に手を当て震えを抑えようとする。


そんな状態で、抵抗すら出来ずにPBTを破壊されたわけか。


「ビショップは……黒井は、どこに行ったんですか?」


「わからん……聞いた話では、バベルの塔の上に飛んで行ったらしいが……詳しくは何も」