東京ヴァルハラ異聞録

~西軍・秋葉原~


「何してるの!!早く止めて!このまま進めば、キングが破壊されてしまうってわからない!?」


万世橋の上で、人形のように整った顔の女性が声を上げる。


月影乃亜。


旧防衛部隊が駐留していた場所から、秋葉原まで移動して、黒井によって落とされた厄災、ルークを止めようとしていた。


月影の指示のもと、多くの人間がビルの上や地上で足止めをしようと戦いを挑むが、その足は一向に止まらない。


「あのデカブツ相手に並のやつらじゃ足止めも出来んじゃろ。若いの、ここはひとつ、共同戦線と行こうじゃないか」


焦りを見せる月影に声を掛けたのは……御田英太。


その背後には、橋本率いる侵攻部隊の姿があった。


「!!橋本。あなた方の力は借りません。私達だけで倒して……」


と、月影がそこまで言った時だった。


ルークが、ビルの一つをなぎ倒し、それを抱えて月影がいる場所に放り投げたのだ。


ほんの少し、回避する判断が遅れた。


その遅れは、月影にとっては致命的なものだった。


いくら障害物に打ち付けられても大したダメージはないとは言え、ビルほどの質量の下敷きになれば確実に死ぬ。


それ受け流す術も、粉砕する術も持たなかったから。


「ダ、ダメッ!」


死を予感したのだろう。


月影は目を閉じ、その場に屈んだ。