東京ヴァルハラ異聞録

最悪の事態なんて考えたくないのはわかるけど、それは考えておかなければならない事だ。


そうでなければ、いざそれが起こった時に身動きが取れなくなるから。


「それは何なの?何万人も死ぬような酷いものが、あの卵の中に入っているの?」


沙羅の純真な眼差しを向けられて、それを見た名鳥は照れたように目を逸らす。


「い、いやあ……可能性の話なんだけどさ。昔、バベルの塔の中にいた怪物『ビショップ』さ。巨大な蛇のような姿をしていた。卵と聞いて、俺はそれしか思い浮かばなかったね」


ポーン、ナイト、ルーク。


そしてビショップか。


ありえない話じゃないと思うけど、だったら黒井はそのビショップに殺られた?


いや、まだ卵は孵化していないんだろ?


……わからない。


考えたところで、その謎が解けるわけじゃないんだよな。


話をしながら歩く事15分、俺達はスカイツリーの下にある商業施設までやって来た。


歩きながら食事を摂り続けた美姫も、何とか満腹になったみたいだ。


「さてさて、あの展望台の上にあるわけだけど……わかってると思うけど、この高さから落ちれば、いくら俺達でも助からない。それは覚悟してよね」